聴覚障害者の教育の歴史(世界編)

聴覚障害者の教育の歴史(世界編)

聴覚障害者に対する社会の態度は、歴史的には三つの時期に区分される。

第一 古代から中世にかけて、障害者が迫害され、虐待されていた時代。
第二 キリスト教の普及期で、障害者が保護され、憐みの対象とされていた時代。
第三 ルネッサンス以降、障害者を受け入れて出来るだけ社会に統合させていこうとする時代

聴覚障害児を社会に統合させようとする教育は、ルネッサンスとそれに続く人文主義思想によってその可能性が叫ばれ、16、17世紀に、スペイン、オランダ、イギリス等の先進諸国で家庭内の教育が試みられた結果、18世紀の後半に、フランス、ドイツ、イギリス等にろう学校が設立されて本格的化し、急速に普及してきた。

欧米における聴覚障害児教育の歩み

学校教育の開始

1760年 フランス ド・レペ パリろう学校
     宗教的使命観に基づく貧困ろうあ児の教育と保護を目的とした学校
      手話法で書き言葉と意味を指導

1778年 ドイツ ハイニッケ  ライプチッヒ聾学校
     聴児の教育経験を生かして聴覚障害児に聴児のように普通の言葉で話す
口語法

1783年 イギリス ブレードウッド ハックニー聾学校
     富裕な家庭の聴覚障害児の学校
      口語法

その後、次のように欧米諸国に普及していく。

1779年 オーストリア ウィーン校
1784年 イタリア   ローマ校
1790年 オランダ   グレーニンゲン校
1795年 スペイン   マドリッド校
1802年 ハンガリー  ワルツェン校
1806年 ソ連     ペテルブルク校
1807年 デンマーク  コペンハーゲン校
1808年 スウェーデン ストックホルム校
1817年 アメリカ   ハートフォード校
1823年 ポルトガル  リスボン校
1824年 ノルウェー  トロント校

義務制の実施
1805年 ドイツ  ハイニッケの主張によりシュレスウイッヒ・ホルシュタイン国で、教育可能なろうあ児の就学義務制が世界で最も早く実施される

1870年代 ハンブルクその他で義務制が制定されたものの、全国が統一されたのは1938年です。

イギリスでは、聴児の就学義務制が制定された1876年、1880年に10年余遅れて、1893年に盲・聾初等教育法により決定される。

フランスで、聴児の就学義務制が1880年に施行されたにもかかわらず、聴覚障害児については、公的な扶助は充実されたものの、全国的に義務制を規定されるに至らなかった。

ノルウェーは、1881年、スウェーデンは1897年に、アメリカではマサチュウセッツ州が1905年に、ソ連は1931年に義務化を施行した。

教育方法
1880年にミラノで開催された国際会議で口話法を全国的に指示する決議がなされ、以来、口話法による教育が主流となっていったこと。

1900年前後からアメリカのろう学校で3~4歳の就学が開始されたこと。

1920年にアメリカのベル研究所で純音聴力測定器が開発され、1930年代に集団補聴器がアメリカで開発されたことによって聴覚活用の教育が推進されたこと。

1950年以後の動向としては、アメリカでは指導方法を口話法に限定しないトウータル・コミュニケーション法が優位になったこと。

コンピュウタ技術の応用が進んで文字放送や字幕入りビデオ製作が開始されたこと等が注目に値する。

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